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高橋メソッド
技法教則本について
ごあいさつ
はじめに
教則本への経緯
伝移模写
絵画指導の理念
専門職としての技術
 イナバウアと名画
油彩画の学び方
基礎技術とは
あとがき
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ごあいさつ
 
 高橋メソッド・中津美術研究所のホームページにご訪問ありがとうございます。
当研究所は1985年・東京都大田区に[池上絵画教室]として開設しました。その後、技法教則の編纂に着手すると共に改良を重ね現在の絵画学習方式[高橋メソッド・技法教則本(第一次)]が完成、87年には[高橋メソッド・池上美術研究所]に改名、新たな活動を開始しました。
2002年には、都心から一番近い清流と言われる中津川のほとりに移転、現在の[高橋メソッド・中津美術研究所]に至ります。
 東京の教室に通われていた方のほとんどが、遠距離にもかかわらず引き続き通学されています。また移転後は関西や九州方面からの通学者が増えたことも特徴です。「新幹線や飛行機、深夜バスでの通学は大変です」と、入学を再検討するよう勧めれば、「海外に留学するよりも近い・・」「内外の美術学校を調べたが、高橋メソッドのような研究所はどこにも無いので・・」との答えが返ってきます。
通学の距離や時間を問わず高橋メソッドの門を叩かれる方々からは、絵を学ぼうとする強い意思と意欲がひしひしと伝わってきます。そして、その度に「可能な限り皆さんの希望を叶えてあげよう」と、気が引き締まる思いです。

 これから絵を学ぼうとされている方、あるいは現在、絵の学校に通っている方が、高橋メソッドに興味・関心を持たれたならば、先ずはこのホームページをしっかりお読みください。「高橋メソッドでは、どのようなことが学べるのか。自分の目的に合った学校なのか・・」を、よく調べてみてください。ご質問があればメールでお問合せください。可能な限り返答します。そして高橋メソッドの内容に納得できたら、一度、門を叩いてみてください。
 定員制により受講人数に限りがあるので、随時入学可能とは参りませんが、出来る限りの対応を心がけています。定員時の場合でも根気よくお問合せください。

 なお、このホームページは[高橋メソッドの教則]に関する説明やメソッドの活動のほか、技法解説コーナー、各種イベント紹介なども随時加えてまいりますので、またのご訪問をお待ちしております。
高橋メソッド・中津美術研究所
主宰 高橋亮馬



はじめに

 
「フレマールの画家の時代には、ダ・ヴィンチは存在しなかった。ラファエルの時代には、ルーベンスは居なかった。アングルの時代にピカソはまだ生まれていなかった・・」。
私達現代人は過去のどの画家よりも多くの情報を所持しています。つまり先人の画家達よりも多くを学べる環境にあるのです。そんな恵まれた時代だからこそ高橋メソッドの教則が生まれたのです。



教則本への経緯 [建学の精神] 
 
「美術館の名画がきっかけで絵を習い始めた」という方は大勢いらっしゃいます。私はベラスケスの絵がきっかけでした。はじめて描いたのは子供の頃のマルガリータ。形的には似ましたが深い色合いや独特の筆跡には程遠いものがありました。専門家と呼ばれる先生や画材屋さんに相談すれば、簡単に解決するものと思っていましたが、実際は予想外なものでした。「巨匠達の技術を教えられる人も適切な技法書もない」ということを知るのに、絵を始めてから半年も掛かりませんでした。
 
「名画がきっかけで迷画の世界に迷い込んでしまった」という人もまた大勢いらっしゃる所以です。とはいえ決して落胆した訳ではありません。学びの場を失った印象派の画家のように自然に美術館に通い始めるようになったのです。美術館には基底材の種類、支持面の状態、下地の色合い〜厚み、骨刷り〜下絵の手法、顔料の粒子、絵具の粘性、技法様式、ニスの状態、経年変化・・、に至るまで、知りたかった答えがすべて揃っていました。
「これだけ豊富なデータ(作品の事例)がありながら、どうして絵画学習のために情報化されていないのか」と不思議に思う一方で、「絵具は様々な顔料と油と樹脂・・、描くものは板・布・壁・金属・・。どれをとっても多種多様。描き方に至っては十五世紀から今日までに数え切れないほどの事例がある。もしこれらを技法書や教則本にまとめるとしたら、複数の科目に渡る分厚い医学書や法律の本のようになってしまう」と、一瞬ひるみもしましたが、「誰かが教典を作らなければ、油彩画技法は滅びてしまう」という思いの方が勝りました。
今から三十数年前、私が十歳の時のことです。

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伝移模写 [実地の態様] 
 
 例えばラファエルやレンブラントを、それぞれ何十点か描いているうちに、最表面から下層に至る技法構造が徐々にパターン化されてきます。
「基底材にはどのようなものを、下地の色や厚みは、下絵の手法と彩色連携は、三層仕上げの場合、一層目の絵具の厚み(配分)は…」といった具合に、原資(名画)の最表面を通じて、下層へと一層づつベールを剥すかのように、各層の状態が解析できるようになるのです。

名画の科学的調査は、二、三十年前にも行われていたことも確かですが、当時の技術では決定的な情報を得ることはできませんでした。絵の現場で名画の技術を実践するには、学者たちによる文献や科学情報は、ほとんど役立つことはありませんでした。唯一の手掛かりは、絵師の経験と感です。原資の目視を通じて再現された目の前の絵こそ、真実の技術なのです。長年積み重ねてきた[伝移模写]。そこから得た多くの情報は、十年、二十年後になって科学的にも少しずつ実証され始めています。

「伝移模写」、中国絵画や日本美術では普通に使われてきたようですが、油彩画界では、ほとんど使われませんでした。その意味や意義については多義に渡りますが、要は「伝統から技術を学んで継承すること」です。言葉的には理解しやすいものですが、実際に行うとなると別問題です。未経験者は当然のこと多少の経験者といえども独学で実践するにはハードルが高すぎて危険です。
「先人の技、高度な技術を多くの人たちに触れてもらいたい。それを実現するには、どのようにしたらよいか」。試行錯誤を何度も繰り返した結果が高橋メソッドの技法教則です。

これまで神秘や謎として片付けられてきた巨匠達の技術は、高橋メソッドを通じて現代版フローチャートになって蘇りました。バッハやモーツァルトを学習する音楽家たちのように、ファンアイクやルーベンスの技術に直接触れることができるようになったのです。
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絵画指導の理念
 
 
 教則を作る上で最初に行ったのが、用語の準備とその定義づけです。コンピューター関連を始めとする多分野の急速な進歩は、整備された用語と定義の上にあると考えたからです。教則の構成、いわゆる学習の進め方については、「練習を重ねることで、確実に進歩上達することができる」音楽や語学の学習スタイルを規範としました。
そんな最中、ユダヤ系の芸術家たちを紹介した本を読んでいると「まるで自然の中で呼吸をするかのように技術と教養を身につけ、将来、独立し得る態勢を整える」という、メニューヒン氏の音楽教育理念に出会いました。「これだ」と共鳴しました。絵画教育にも、そのまま取り入れることができると思ったからです。 
 
「デッサン力が足らん・・。表現力が足らない・・。訴えるものが無い・・。面白くない・・。」と指導された生徒さんは「ならば、どうしたらよいのか」と思い悩み、筆も鉛筆も止まってしまうこともあります。結果には必ず原因があります。何か問題が生じたら、その原因を考えて改善策を講じたり、問題解決へのヒントを提供するのが指導者の役割です。
基礎指導は、その人がその時に出来ることから進めるべきであり、そこで生じた問題は具体的な指示と目的に合った練習で、しっかり改善できるシステムになっていなければなりません。絵の基礎を学ぶ段階で生徒さんを思い悩ませるような要素は、高橋メソッドにはありません。もし、そういったことがあれば、それは講師の責任と見なされます。 
 
「高橋メソッドに通う前は、絶対に描けないと思っていた名画」「入門当初は、まったく自信が無かったダ・ヴィンチ…」それが何時の間にか当たり前のように描いている自分に驚いた。という生徒さんはたくさんいます。「今度のレッスンはどの画家・・、ロイスダールの風景画」「私はスルバランかカルフの静物画をやってみたいな・・」高橋メソッドの教室内での会話です。「次のレッスンは、どの作曲家?どんな曲…。バッハのあの作品をやってみたいな」音楽学校での会話と良く似ていると思いませんか。一見、何の変哲も無い会話かもしれませんが、私達にとっては、まだ四半世紀にも満たない高橋メソッドの技法教則が、歴史ある音楽学習に対等していることを確認する場面でもあるのです。 
 
「絶対に出来ないと思っていたことが、何時のまにか出来るようになっていた」。そんな生徒さんたちからのメッセージからは、メニューヒン氏の教育理念が、絵の世界にもしっかり息吹いたことを感じさせます。
「まるで自然の中で・・」もし、この言葉に出会っていなかったら、複雑で難しい技術を、そのまま指導していたかもしれません。難解な技術を解りやすく教えることに苦労するよりも、その苦労を生徒さんに負わせたほうが教える側は楽だからです。とはいえ実際にそうしていたならば、ほとんどの人が基礎の途中で挫折したり、あるいは絵が嫌いになる人をもっと増やしていたかもしれません。そう思うと、ぞっとします。
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専門職としての技術 
 

「教え得られることを教えず、学び得られないものを教えようとする…」印象派時代の美術家フロマンタンは、当時の美術教育をこのように批判しています。百年以上も前の話ですが今現在は改善されているのでしょうか。 
 
高橋メソッドを美術大学にしたら、[一年目は、色々な材料を使って様々な表現方法を学習。水性絵具を使って色彩分析・筆法・彩色方法、先人の技術を学習。二年目は、油彩基礎課程/関連画材の自製から三大様式の初歩。三年目は、三大様式を徹底学習〜絵具・画用液・支持体等の画材の製法。四年目は三年目の応用/画材製法のマスター。大学院や博士課程については別の機会に…]大雑把に、こんな時間割になるでしょう。
大学の四年間は、すべて「教え得られるものを教え、学び得られるものを学ぶ」のが前提です。この期間に完全な自主(オリジナル)制作は一切、行いません。画学生に個性や感性を発揮してもらうのは基礎技能を身につけた卒業後、あるいは大学院進学後です。

「今日は、ここからここまで・・。講師の指示は絶対厳守、それ以外のことは駄目…」「この部分を忠実に再現しなさい・・」。高橋メソッドの教室での普段のやり取りです。
「そんなんじゃ個性も独創性もないじゃない」「言われた通りやるなんて芸術でもアートでもないじゃん・・」そう思われた方は、高橋メソッドには不向きです。 
 
私の本業は工房の絵師です。普段は「基底材は板か銅板で、レンブラント調の肖像画を・・」「痛みが激しい絵なので保存の為に復元模写してほしい」「社内をバロック風に飾りたいので複数の風景画を注文したい」「国内博物館では前例の無い完全手彩色の複製画を請け負って欲しい。制作見本どおりに仕上げて欲しい…」といった仕事が大半です。高橋メソッドの学生さんたちが先生の指示に従って描くのと、私達、工房の絵師が多種多様な注文主からの要望に従って仕事をこなすこととは同じ線上にある行為なのです。
絵の初心者に「今までにない新しい絵を・・、面白い表現を・・」と求めるような指導方法では、私達のような絵の仕事は出来ません。高橋メソッドでは、最初に勉強する一本の線から品質を意識します。高橋メソッドの教則は将来、職業にし得る技術を指導するのがその根底にあるからです。 
 
ペルジーノの工房時代のラファエルも、きっと「指示通りに・・、見本どおりに・・」といった親方からの厳格な指示のもとで修行していたと思われます。果たしてその数年間は、ラファエルにとって才能の妨げになったでしょうか。それとも高い学費を払って、ほとんど指導もされずに自由に描かせてもらえる四年間の方が有効なのでしょうか。
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イナバウアと名画
[共通する練習方法] 
 
「絵の基礎とは」と聞かれれば、先ずは「材料の扱い方を知ること」と答えます。五百年以上の間に、たくさんの名画が生まれました。展覧会場では「十七世紀のスペイン絵画だ」「ルーベンスの初期の作品だ」と、作品脇のキャプションまで近づかなくても、その作品が描かれた時代や地域、あるいは作者を判別できてしまう事も珍しくありません。 
油彩画という同じ技法でありながら、それぞれに特徴があるのは、素材や製法の違いにもありますが、作者ごとの絵具の組み立て方、手法といった「材料の扱い方」の違いにもあります。その膨大な種類の描き方、複雑な材料構成、「そのどこからどこまでが基礎で、どこをどのようにして勉強すればよいのか」。この問題は、親方がいた工房という学びの場が無くなってしまった時代から今日に至るまで、画学生たちの前に立ちはだかった高い壁でもありました。 
 
 金メダルの荒川さんの演技は芸術です。様々な表現技法で構成された名画のようでもあります。
フィギュアスケートの初心者が最初に練習するのは、氷の上での[立ち方]、[前進〜曲線走行・・]、続いて[演技(作品)のための基礎・・]へと進みます。最初から、あの有名な技から入るわけでも、入れるわけでもありません。それは高橋メソッドも同じで、名画の技に入る前に、鉛筆の持ち方、直線、曲線、ジグザグ、強弱を付けた筆法から始めます。氷上と画学紙の上との違いはありますが、その時に出来ることから確実にクリアーしていく練習方法は、フィギュアスケートとまったく同じです。最初から名画の技術に取り組むのは、スケート同様、無理というよりも、明らかに危険かつ無謀な行為です。
 
「数え切れないほどのストロークで組み立てられた名画」と、いっても、いかなる名画であれ最初はワンストローク、一筆から始められます。その一筆の状態〜調子(高橋メソッドでは、名画を構成するエレメントと呼んでいます)だけに限定すれば、そのほとんどの場合が、まったくの素人でも描ける技術です。ただし、その状態を何時でも何処でも瞬時に処理したり、同じストロークを何百回も継続したりする、いわゆる実際の制作になれば、練習と経験が必要です。高橋メソッドでは、そういった要素も含めて、先ずは「一本の直線(制作基準=作業目的)を準備したら、それと同じものを継続して描く練習」や「最暗部と最明部(制作基準=作業範囲)を準備したら、その間に中間の調子、さらにその間に中間を・・によるトーンチャート制作」といった具合に、シンプルな描画〜材料条件から練習を始めます。そこでもうひとつ大切なことは、これから行う練習の目的、その仕上がり状態などを、生徒さん自身が、しっかりイメージできる範囲内のことから学習を進めていく。ということです。
 練習を積み重ねていくうちにイメージできる範囲も当然広がっていきます。教える側は、その進展状態を確認しながら描画条件を徐々に増やしつつ本人の技術レベルを向上させていくのです。 
 
入門当初は、気が付かないかもしれませんが、ある程度の段階になると、高橋メソッドの一連のカリキュラム、そのひとつひとつが「複雑な材料と繊細な手仕事で描かれた名画の技術」へと、リンクしていることに気が付くはずです。


次号につづく
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