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卒業生からのメッセージ

■たった3ヶ月で合格
アメリカの美術大学[入学案内書]を受け取った去年の夏。私は真っ青になった。受験内容の中に"自画像デッサン"と書いてあったのだ。彫金を専攻する私にとって、画用紙にモノを描くなど、まったく無縁のことだと思っていた。

何の知識も技術もない私が、高橋メソッドで絵を学び始めた。
先生は嫌な顔ひとつせず、私の能力を上手に引き出して下さった。一回の授業で自分の成長が目に見えてわかる。何年も頑張っている知人の美大生や美大受験生には申し訳ないけど、先生や教室の皆さんのお陰で“たった3か月”でアメリカの美術大学の合格通知を手にしてしまった。
面接担当の教授は、私のデッサンのファイルを見て僅か数カ月間の進展に、高橋メソッドのカリキュラムに特別な関心を寄せていた。高橋メソッドに出会えた私はとっても幸せです。

*追伸/勝手ではありますが、何とかアメリカの大学でご教授いただけないものでしょうか

 A.T 女性(アメリカ) 高橋メソッド短期特設デッサンコース終了後、
 ニューヨーク・パーソンズ・スクール・オブ・デザイン卒
■美大では学べなかったことを指導
“絵画表現の言葉”つまり画材の性質や扱い方を理解・認識することは、描く者にとって非常に大切です。私はそういった絵画技術の基礎が学べるものと信じて美術大学に入学しました。しかし、そんな当たり前の希望に答えてくれる人もなく、学べる場でもなかったことがとても残念でした。(それは決して私に限った経験や意見ではありません)既製品の画材を何ら問題意識も持たずに自己流でやって来た自分、思い込みや固定概念の殻に閉じこもっていた時、私は高橋メソッドと出会いました。

先生のご指導を素直に実践すると、同じ材料がまったく違った次元で豊かに語り出すのを目の当たりにし「基礎」という本来の姿を見た気がしました。様々な材料と複雑な技術でありながら、実際の制作を通じて体系的に、しかも初心者の方でさえ誰もが高いレベルで効率よく進展されていくのが、はっきりと実感できるこの教室には、大学以上の充実感を感じています。

これから油彩画を始めようとされている方、そして、画家を志す方々が、美しく偉大なこの「基礎」を学び、より豊かな表現を手に入れてほしいと願います。

 Y.H 女性(神奈川県) 多摩美術大学卒 一般課程[II]終了

■伝統技術の上に現代美術が

世界の現代美術をリードするこの大学には、各国から受験生が集まります。日本からの受験生は、皆さん日本の美大の大学院などで学ばれた方ばかりですが、日本人でただひとり合格できた私は、美大の経験はなく、高橋メソッド・池上美術研究所(*1)が、唯一の学びの場でした。

・・・国際舞台進展へのネックになっている孤立した価値観と限られた技術。そして、古い時代の絵画と現代アートを個別に考える日本の傾向は、美術教育の現場からも見直されることが望まれます。

“TAKMET”(*2)の「現代アートは、あくまでも過去の技術の上に成り立っている」という考え方は、こちら(英国)も一緒です。そして過去の巨匠たちは、今現在も、その優れた手本を私たちに伝えてくれています。古い時代の作品に新しさを感じることも少なくありません。発想的にも材料的にも何かを表現する上では、新旧の隔たりはありません。
 今、私がこの学校で、プロのアーティストたちと一緒に創作活動ができるのも、そういったことを絵を始めた当初から、高橋先生から学ぶことができたからです。
 グローバルな視点から、的確かつ具体的な絵画指導を行う高橋メソッド、その斬新で革命的な学習スタイルは、絵画の歴史に新しい1ページをつづることになるでしょう。高橋メソッドが身近に存在し、直に学ぶことのできる日本の皆さんが、とてもうらやましく思えます。

 K.Y *女性(ロンドン〜神奈川県)/高橋メソッド一般課程〜特設専門課程〜応用課程
 受講後、ロンドン大学ゴールドスミス大学院に入学。
 今秋('97)より同大学院マスターコースに進学。
 高橋メソッド応用技術学科終了
 現在:石橋財団所属作家

 *1 現在の高橋メソッド・中津美術研究所
 *2 TAKMET=ロンドン・ナショナル・ギャラリーによる高橋メソッドのコードネーム

■絵画技術は、高橋メソッドなら、どなたでも確実に上達する

「高橋メソッドは、美大生や美大卒業生とかベテランの方しか入学できないのですか」
「専門家を目指す方が対象で、私のような未経験者が、趣味程度で絵を習うことはできないのですか」

これは、昨年のグループ展(サエグサ画廊)で受付をしていた時、ご来場者の方からのご質問でした。
教室でも入学前の面接時に「このデッサンを描いた方は、どれくらい習われているのですか。私もこんなふうに描けるようになるのですか」といったご質問を良く聞きますが、実は私も入学時に教室に置いてあった作品を見て同じ思いをしました。
三か月を過ぎた頃でしょうか、新しく入門された方が、今度は私の絵を見て同じ質問をされました。ほとんど方が同じような思いをなさり、結果的にはそのご本人が新しい方に、同じ印象を与えているのです。

そういえば、入門当初「まるで自然の中で呼吸するかのように上達し、いずれ独立し得る技能を身につけていく…」という指導コンセプトをうかがったことがありました。
 正直いって自分自身は、余り実感はないのですが、他の皆さんの進展のご様子は、はっきりと確認できます。それも経験・未経験問わずです。先生は上達させる技法のようなものを持っているのでしょう。私のような初心者でフマジメ!な生徒でも、着実に絵を描けるようになってしまうのですから。「最初は手本を見ながら楷書から、そして行書を習ってから自分の作品を」この楷書とは、ラファエロやアングルで、行書とはベラスケスやレンブラントが手本。ルノワールやセザンヌならまだしも、そんなの絶対無理だと思いませんか。
 「印象派のような描き方をテキストにするのは難し過ぎる。感覚的に描く彼らの技術を研究するのは至難の技、その前に計画的に描かれた楷書から勉強するのが順序、第一そっちの方が近道だし簡単」説明内容が良く理解できないうちに、私は楷書の勉強に入りましたが、ラファエロやクラナッハを描き終えてその意味が良くわかりました。

私のような素人は、一度すごいな、絶対にできないな、と思うとずっとそう思い込んでしまうのです。でも実際にやってみると、まんざらできないこともないのです。先生いわく「大変そう〜難しそう、という言葉は面倒くさいと直訳できる。まだちゃんとやってもいないのに、そうやって決め付けてしまうのはマイナス思考」とのことですから、できるかできないか、やるかやらないか迷っている方も、ぜひチャレンジしてみてはいかがですか。
 ちなみに現在、私は去年ロンドンでスケッチした「ハイドパークの風景を」パネルに白亜地塗り塗料を施したファースト・メソッド系の技法で描いています。

 A.M *女性(東京) 応用制作課程終了


新入生の感想

高橋メソッドを選んだ理由
本気で絵を描こうと思ったのはここ最近なのですが、小さい頃から絵に強い関心を抱いていました。

「思った通りに画面に線や色彩を集めて、表現したい何かを思いっきりキャンバスにぶつける」にはどうすれば良いんだろう?
真っ白な紙はいつでも自由な線を引くことができるけど、表現の奥行きはいつまでたっても深まりません。

油絵のあの輝かしさはどうやって表現されているのだろうか?まずは基本を知らなければならないし、西洋の古典的な技法を詳しく説明している書籍や教室などはなかと考えます。

市販の技法書や美術館に出かけてはその仕組みを解き明かそうと努力しました。しかし、少しずつ前進はできているもののこのペースでは人生が終わる頃にやっと仕組みを理解できる程度なんじゃいだろうか?

それでも調査を続けます。そこでインターネット上に油彩技法の解説をしている映像はないか?ということで検索してみたところ、高橋メソッドに出逢ったわけです。

ルーベンスの技術を解説しているDVDが売っていました。それなりの金額なのでどうしようかしばらく悩みました。しかし、ダイジェスト版を見れば見るほど私が探していた古典的な油彩技法が事細かに解説されていることが見て取れるわけです。

買うしかないと決断し、DVDが届きさっそく目を通します。私はこれで思った通りの表現をキャンバスに込めるための切符を手に入れたのですが、油彩技法はとにかく時間がかかりそうだし、技術も一朝一夕で習得できるものとは思えません。しかし、他に理想的な古典的技法を解説してくれそうなモノも見当たりません。やはりやるしかないと思いなおします。

とにかく無学な私はDVDだけを見て技術を習得できるとは思えなかったものですから、教室を開いていないか調べてみると若干生徒を募集しているという知らせを見て、俵屋工房に連絡して見学の予約を入れます。見学に行く前からここで学ぼうと決めていました。そして、現在2ヶ月目です。

最初は鉛筆を使った稽古からでした。その技術においても私が何度も疑問に思っていたことに対してひとつひとつ答えを与えてくれます。長い道のりと分かりながらも確実な前進という手応えを感じます。

どれを取っても科学的というか難解に見えても解き明かす方法を教えてもらえます。教え通りにやるのがルールなので、自由はあまりないかも知れません。しかし、学ぶべきことがはっきりしているので迷いはほとんどありません。行くたびに力がついていく。憧れの西洋古典絵画。それらを学び・吸収し、いつしか来るだろう自分なりに自由な表現ができる日を楽しみに稽古に励んでいます。

石井将敬さん 入会日:2009年7月



Q&A

【初 級 編】

Q-1.
 「いろいろなものを自由に描きたい」のですが、どうしたら良いでしょうか。

A.
 「イチロー選手にのようになるには、どのようにしたらよいでしょうか」と、同じ質問ですね。
自由自在という意味を良く考えてみましたか。歴代の巨匠たちが自由自在に描けるようになるまで、どれくらい掛ったでしょうか? そんな彼らは、一生涯、自分の絵に満足したことがあったのでしょうか?
絵画技術は確実に上達することは確かですが、「自由自在」になるには、かなり次元の高いところにある思います。
「作者の意図は、材料を組み立てることで表現される」。ひとつの作品は材料たちのパフォーマンスによって表されます。さしずめ作者はキャンバスというステージの上で、材料たちを操る演出家であり舞台監督でもあります。
目的に合わせたステイジング(各種支持体)〜いろいろな性質と役割を持つ出演者(絵具)〜ステージを演出する(技法)〜証明や効果音(画筆や画溶液など)を自由自在に操る。「自由自在に…」とは、こういった一連の作業を「思うがままにこなす」ということでもあります。

これから舞台監督や作曲家になるとしたら、あなたはどうなされますか。
…音楽家たちは今も昔も楽譜や法則の基礎を学び、バッハやモーツァルトの作品を手本にして、将来の活動の基盤を築きます。
絵の世界もこれと同様、昔の画家たちは、師匠や先達の技術を手本にして腕を磨きました。
名画は、音符を組立てた名曲と同様に「材料をバランス良く組み立てた結果」でもあります。そういった作品を模写を通じて何度もひも解くことで、さまざまな作品の構造〜材料の扱い方を学ぶことができます。
とはいえ、最初から独学で巨匠レベルの技術に取り組むには、リスクが伴います。ほとんどの方が模写による学習が長続きしない所以です。まずはその時にできることから、そして、その人の技能力に合わせながら、少しづつステップアップさせていくことが大切です。高橋メソッドは、そのためのアドバイザーだと考えてください。


Q-2.
以前に通っていた教室の先生から「デッサン力とか表現力が足りないと」と言われたので、自分なりに努力してみましたが、なかなか上達しません。 

A. 
先生はその指摘に対して、どのような指導をされましたか。「努力が足りない」「ちゃんとできるまで練習しなさい」といった具合ですか?
高橋メソッドでは基礎課程の段階で、「デッサン力や表現力…」といった指摘をすることは一切ありません。なぜならば、その前にやるべきことがたくさんあるからです。そういった問題は、それらがクリアーできて初めて問えるようになるのです。逆にいえば、しっかり基礎を身に付ければ、デッサン力や表現力といった要素は自動的にあとから付いて来るものです。

あなたが指摘された問題点には明確な原因があるはずです。もし、あなたが、先生によるそれまでの指導に忠実だったなら、上手に出来ない原因は、指導者の方にあると高橋メソッドでは考えます。
「形が悪いのか。ドローイングの方法か。コントラストか。制作プロセスか。構図か…」指導する側は、できるだけ具体的な指摘、あるいは何らかのかたちで、模範を示して改善策を講じる立場にあります。学費には、ひとりでは分からない事や、出来ない事を教えてもらうための情報料です。

*高橋メソッドとはいえ、レッスンを通じての問題点や技術的な壁に接することが稀にあります。ほぼ100パーセント解決するものですが、目的のある問題点や壁は、教える側にも学ぶ側にも、とてもラッキーな場面でもあります。
たとえば、「同じ指導方法で、描き方を伝えても、何度説明してもうまく行かない」という事例ですが、このような場合は、慣例的に「誰でも簡単にできる技術」と、講師による勝手な思い込みが原因であったりもします。講師の指導内容と生徒さんの受け止め方にズレがあったのです。高橋メソッドでは、こういった事例を通じて、指導内容の改善に努めてきましたので、生徒さんの壁は、高橋メソッドにとっては、財産でもあるのです。


Q-3.
 「初心者でも親切指導」「あなたの才能を引き出します」という絵の教室に通い始めましたが、初日から油絵具セットを与えられ、目の前の静物を「個性豊かに描きなさい」といわれましたが、まったく経験がないので、どうしてよいのかわからなくて困っています。

A.
 高橋メソッドの案内書には「…親切指導」とは書きませんが、実際の指導内容は比較的というか、かなり!親切な方だと思います。その親切さの基準は、描画時もしくは学習時の「疑問」を、できるだけ取り除くことにあります。
何もない画面に何かを表現する時、まず最初に直面するのが"?"や "X"、例えば、描く対象物のサイズ・配置・構図・コントラスト配分・色彩・各種技法、そのほかメジュームやニスといった画材仕様…とたくさんです。

 はじめて絵を習う方が画材一式を渡されて「個性豊かに○○を描きなさい。といわれたがどうして良いのか分からなかった」というお話は、今でもよく聞きます。これから絵を学び始める初心者の方ならば、頭の中は、ほとんど「?=クエスチョン」。ハードディスクは、あってもソフトがインストールされていない状態ですから、適切な処理が行なえないのは当然のことです。

高橋メソッドでは、基礎課程における最終課題を踏まえて、先ず最初に取り組める「?=クエスチョン」から問題を解決して行きます。そして徐々に複雑で高度なものへと進展させて行きますので、絵の難しさや大変さを感じられるよりも、むしろ「毎回のレッスンが楽しい」とおっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。

高橋メソッドの研究生の皆さんには、以前に他の教室や美術大学などを経験者された方が少なくありません。そして、ほとんどの方は、あなたと同じ経験をされています。恐らく、あなたの先生の先生も同じような指導を受けてきたのではないでしょうか。


Q-4.
 石膏デッサンや鉛筆デッサンは上手に描けるのですが、油彩画になるとまったく思うように行きません…。

A.
 石膏を描く場合、木炭か鉛筆を使っているのが一般的なようですが、「この材料だと大丈夫だけど油彩画だとダメ」という話は、特に美大予備校を経験した方からよく聞かされます。

その原因は、第一に、「石膏デッサンのためのデッサン」あるいは「受験のための絵の勉強」といった偏った目的にあります。
第二に、「鉛筆デッサンや木炭デッサンでのレッスン内容が、油彩技法と連携していない」ということです。
第三に「油彩画技法の基礎と材料上の認識不足」が考えられます。

高橋メソッドでは「デッサンのためのデッサン」といった、画一的なレッスンは行っていません。最初のレッスンで行なう単純なドローイングは、最終目的のための第一歩です。その最初の一歩から、名画レベルの技術に取り組むための高橋メソッドのカラクリのようなレッスンが始まります。たとえシンプルなドローイング練習とはいえ、その後のカリキュラム〜高度な技術に、すべてがリンクする(繋がる)ように構成されています。
ひと通りの基礎が終了したら、どなたでもダ・ヴィンチやラファエルが描ける所以です。


Q-5.
 印象派系の絵よりも、もっと古い時代の描き方に憧れて、いろいろな教室に通いましたが、私が希望する絵を教えてくれる教室が見つかりません。

A. 
私自身も、あなたと同じ経験があります。油彩画を始めてから十年以上、内外の絵の学校を探しましたが見つかりませんでした。結果的に自分の希望を叶えてくれるのは唯一、美術館にある名画だと悟りました。

「名画」がきっかけで"迷画"の世界に入ってしまった」という話はよく聞きます。「名画に魅了されて絵を学ぼうと思い立ったまではよかったのですが、教室が見つからない」。一般的には特別な要望とは思われないのでしょうが、それが絵画学習の現状なのです。
私の著書では、「これまでの美術史を振り返れば、そういった意外な現状にも、うなずけてしまう…」。と説明していますが、決して悲観的になることはありません。私たちは絵画史の流れの最先端に存在します。したがって過去のどの巨匠たちよりも、多くを学べる環境にあるからです。

高橋メソッドは、私自身の経験を通じて「こういった美術大学が」あるいは「美術教室があったら」をコンセプトに設立した今までにない美術研究所です。
どの学びの場をお選びになるかは、あなた自身の判断に委ねられます。


Q-6.
 十七〜八世紀の名画を模写しながら独学してきました。自分なりにはそこそこ描けていると思うのですが、専門家の指導も受けてみたかったので「古典技法を指導」という美術研究所に入学しましたが、一か月程でレッスン内容に違和感を覚え始めました。
…キャンバスを作る際は魚を捕る網のような粗悪な麻布。ダヴィットは、卵のメジュームで描きました。以前にヨーロッパの美術館の修復室に、勤務されていた先生なので期待して入学したのですが…。

A. 
「高橋メソッドでは、本当に古典技法を教えてくれるのか?」といった問い合わせも少なくありません。そんな方々も、あなたと同じような体験をされたのかもしれませんね。

…美術関係者の年鑑や名簿には、いまだに(*1)「渡欧数何回」「外遊数何回」といったものが掲載されていますが、現代社会において、果たしてそれが絵師としてのステータスになるものでしょうか。昭和の中ごろまでは、渡欧するのは至難でしたが、行って帰ってくれば、絵の内容を問わず先生と呼ばれた時代もありました。
また、「修復家だから、絵画技術を指導できる」という認識もどうかと思います。私自身、巨匠たちの技術を上手に再現できる修復家は、私自身存じ上げません。
博物館に展示する西洋絵画を扱う大手企業(*2)との取引契約書には、絵師の学歴記入欄はありません。彼らが必要とする技術は、美術大学などでは習得できないことを、企業は知っているからです。選択基準は、あくまでも、その絵師の技術と実績が要です(*2)。

高橋メソッドでは、入学希望者の方との面接を通じて、高橋メソッドが、「入学希望者の方にふさわしい教室であるか」あるいは「入学希望者の方のご要望にお答えできるか」を、慎重に判断した上で、入学の可否を決定します。高橋メソッド以外の教室の門を叩かれたとしても、その教室があなたにとってふさわしい教室なのか、入学前に充分インタビューした上で、お決めになるのが肝要ではないでしょうか。

付:古典技法に関しては"Q-11"をご参照下さい。

(*1)この文章は1990年代に書いたものです。
(*2)高橋メソッド・中津美術研究所の主宰は、蠻蟻執藝社[西洋絵画複製部門]の初代登録技術者です。また、高橋メソッドは、(資)俵屋工房が併設する美術研究所です。


Q-7.
 英国に留学していた時はキャンバスを手作りしていました。帰国後は、市販の既製品を使っていますが、自製のキャンバスと比べると使用感も画面効果にも違和感を感じています。

A. 
留学時には自製して、帰国後は既製品、おまけに違和感を感じている。ということは、あなたは支持体自身の特質を良く認識していませんね。
 昨年、ロンドン大学ゴールドスミス大学院の学生さんに、抽象画に使う支持体製作を指導してきたことがありますが、支持体には、ほとんどの学生たちが無頓着のようで、材料の選択基準は、日本と同じく「安・近・単」、安い、入手しやすい、早くて簡単のようでした。

制作は材料の選択から始まる。その中でも基底材や支持面にどのような素材や処方(水性〜中性〜油性地塗料…など)を採用するかによって、最初に使う絵具の種類や手法、そして仕上がりの画面効果、あるいは耐久性などが決まる重要なポジションです。
 あなたが以前に自製していたキャンバスが、絵具層にとって理想的な中性地(生"ナマ"のリネンに、エマルジョンタイプの地塗り塗料。もしくは水性地に油性下地など)だったとしたら、普通の市販品と比べ、絵具の食い付きも吸い込み具合も違ってくるし、仕上がりの画面の発色にも影響します。

いずれにしても、いろいろな基底材〜地塗り層〜下地〜下絵〜本制作の技術〜画溶液の処方…など、油彩画全体の構造〜技法用例を通して、支持体自身の役割と性質を、しっかり勉強する必要があります。
支持体のみならず、制作経過に伴う画面コンディションの判断方法とその対処法は、重要な学習テーマです。


Q-8.
 描画用の画用液にはいろいろなものがありますが、購入する時に何を基準にして選べば良いのでしょうか。

A.
 画用液には様々なものがありますので、用途を明確にして頂かないと、的確にご返答することができません。

画用液の種類を大別すると、
○揮発性油(植物性/鉱物性) ○植物性乾性油(未加工/加工) ○各種樹脂溶解液(天然/合成) ○調合メジューム(描画用調合オイル) ○仕上用保護ワニス ○特殊溶剤 ○その他の助剤…などがあります。

画用液の初歩的な選択方法を、簡単にご案内いたします。
○リンシードオイルは未加工(コールトプレスド)のもので、できるだけ新鮮なもの。
○処方済み描画用調合オイルは、何らかの天然樹脂分を含んでいるもの。
○処方済み描画用調合オイルや保護用ワニスなどは、原料により、希釈剤が指定されるものがあるのでご注意ください。
○コリンスキーやセーブルなど軟毛質の筆を使う場合は、描画用のホワイト・スピリット(ぺトロール)を使用してください。筆洗油を使うと筆を傷める場合があります。
○いかなる画用"液"も鮮度の良いものを使用してください。
ほとんどの画材は、製造年月日が分かりにくいので、見分け方には、経験と感に頼るほかありません。

Q-9. 以前に習っていた先生から「描く前にキャンバスには、地塗りをしなさい」と言われたので適当に塗っていましたが、地塗りにはどんな色を塗ったら良いのか、その目的についても教えてください。

A. 
私の教室では基底材(板・麻布・紙など)に何らかの処理をしてから、最初に施された絵具層を地塗り層と呼び、さらにこの層に何らかの処理を行ったものを下地層と呼んでいます。

下地処理には、仕上げの画面効果を目的とした着色のほか、画面コンディション(主に表面加工〜吸収性)の調整〜インパスト(部分的な盛り上げなど)などがあります。
あなたの「地塗り」とは、すでに地塗りが施されている市販キャンバスの上に施す絵具層=「下地」のことでしょう。
下地を施す一般的な目的は、仕上げ時の発色効果があります。高橋メソッドでは油彩画課程の最初に、「性質の異なる三種類の地塗り」と「三種類の着色下地」を準備してから、ひとつのモチーフを、同じ絵具を使って描きます。これによって三種類の着色地による発色の違いなどを学びます。

…どのような下地を選ぶかは、どのような画風〜発色を得たいのかによって判断します。
例えば「金色の夕暮れ風景」をオーカー系の下地に描き、もう一方をグレー系の下地にして描き分けて、どちらが効果的かを比べてみると良いでしょう。
*通常は、夕焼けなど全体が黄色〜オレンジ〜赤〜ブラウン系で占められるものならばオーカー系。真冬の早朝の海ならば、冷たいグレー系が適します。

下地の効力を活用することは、作者の意図を表現する上で、とても有利なことですから、しっかり研究されて下さい。また、下地は、薄塗りなら10日以上、厚塗りならはそれ以上、充分、乾燥させてからご使用ください。


Q-10.
 遠方に住んでいるので通うことができず、五年程前に高橋メソッドの学校案内用ビデオと入学案内を参考にして自分なりに独学してきました。同封したルーベンスの模写は、グリザイユとカマイユ技法で描いたものですが、ご批評下されば幸いです。

A.
 …写真からすると、とても良くできているようですけど、それ以上のことは、実物を見ないと何とも言えません。
模写による絵画学習では、できるだけ多くのオリジナル作品(実物の名画)と接することが肝要です。美術館で実物を前にして模写するのも良いでしょう。

*高橋メソッドの研究生は、一部の美術館での模写を許可されていますので、希望があればお問合せください。

付:高橋メソッド・中津美術研究所への最長通学距離の方は、大分県の方で、約4年間、飛行機で通われました。つづいて[岡山県][奈良県][群馬県]で、夜行バスや新幹線での通学です。

「遠くから大変ですね」「留学するよりも近いですし、ここでしか学べませんから」。生徒さんからの身の引き締まるお言葉です。


Q-11.
 高橋メソッドの案内書や講習会では「15世紀の技法とか誰々の技術…」と言った言葉が使われていますが、講師の方は巨匠たちの制作風景を実際に見たことがあるのですか?あるいはその根拠を知りたいのですが。


A. 高橋メソッドの主要カリキュラムに「ファン・アイク系・ティツィアーノ系・ルーベンス系」の各技法からなる「スリーメソッド(三大技法)」があります。これは油彩画技法が始まってから各時代を象徴する技術、もしくは技術史的に見る革新的かつ特出した作品構造を三種類に分割したものです。
また高橋メソッドで紹介する[○○系の技術]とは、個々の描画技術と作品構造を分かりやすく形容したものであり、高橋メソッドが独自に編成した技法スタイルでもあります。

欧米では、この「三大技法(様式)」が古くから尊重されてきたようですが、学習のための実用書の存在は無に等しいでしょう。また、謎に包まれた技法書も多々ありますが、現場の絵師は、ある程度の期間内に仕事を完了しなければなりません。描画技術については、ファンエイクやルーベンスの仕事を直接、見たり、聞いたりするのが、最も有効でしょうが、実現は不可能です。となると、すべて自分で解決しなければなりません。そういったところから、それぞれの時代〜作者による技術を解析して、実際に再現できる方法をまとめたのが、高橋メソッドのスリーメソッドなのです。

高橋メソッドのスリーメソッドを編成した流れを簡単に説明しましょう。

例えば、「ファン・アイクの画面効果を得るためには、どのようにしたら良いか」ですが、
○科学的データならびに目視を通じてオリジナルの基本構造(基底材・地塗り・下絵層・仕上層など)を確認。
○経年変化などを除いた画面状態を、最も合理的かつ最短のプロセスで再現し得る技術を抽出。
○抽出した技術は、現代の材料事情でも対応できるものであること。

さて、あなたがおっしゃるように、私は先達の制作現場を見たことがありません。しかし、それだけが彼らの技術を知る方法だとは思いません。むしろ彼らの技術が集約された現存するオリジナル作品を、何度も再現することから得られる情報量は膨大です。
私は、官庁からの依頼で、古い時代の作品を完全手彩色で複製する仕事を行っていますが、仕上がり条件は、並べておいても、どれがオリジナルか、レプリカか判断できない状態です。そして、私の持論としては、「オリジナルに酷似するまでのプロセスは、オリジナルが描かれたプロセスにも酷似している」ということです。

*実際にオリジナル1点に対して2点のレプリカを並べて展示した例もあります。所蔵先の長崎歴史文化博物館へ


Q-12.
 高橋メソッドのカリキュラムの一部に「レプリカ=模写」が組み込まれていますが、複製は贋作なので法律に触れませんか?

A.
 ピカソやミロなど、比較的に新しい作品には著作権。著作権が適用されない古い時代の作品でも、所蔵権などが発生する国もありますが、純粋に学習目的でレプリカする場合は、オリジナル(原作)サイズよりも、10ミリ以上の誤差(±)を設けて行うといったルールがあります。
また、営利目的ではなく、純粋に学習目的であれば、これまでに問題が生じたことはありません。
一方、高橋メソッドの母体である俵屋工房では、販売目的に行うレプリカ、ならびに、著作物などに掲載する場合は、すべて所蔵元(美術館など)や関係官公庁の許可を受けて行っています。許可を受けない場合は、作品の一部を変えて描く「シュミレーションアート」という形式で制作販売しています。
(資)俵屋工房とお取引があるアートクリエイトジャパン社(本社=アメリカ)が扱う複製画は、すべてウフィツィ美術館から制作販売許可を得ています。


Q-13.
 名画とはいえ「模写は他人の物真似。個性がない…。だから絶対にやってはいけない」と、いろいろな先生たちから言われてきたのですが…。

A. 
音楽の場合、ベートーベンやショパンなど過去の作品を手本にして演奏、つまり物真似することで学んでいるてはありませんか。それは決して音楽に限ったことではなく、他のほとんどの分野も同じようにしています。
欧米では、「模写による勉強方法」を否定する専門のみならず一般の方がいらっしゃるでしょうか。「それ以外にどうやって勉強するの」といった声が聞こえてきそうです。
日本の油彩画指導者のほとんどの方は、そういった教育指導を受けて来られなかったことから、模写という勉強方法を否定されるのでしょう。もし、一度でもダ・ビィンチの技術に触れたなら、その有用性と素晴らしさを、学生に教えないというわけには行かなくなるでしょう。

色々な意見があって当然ではありますが、私自身は、模写以外にお勧めできる絵画の学習方法を、他に見出すことはできません。


Q-14.
 絵の歴史は古く、これまで多種多様な画家や画風が出現して、もうほとんど出尽くしてしまったように思うのですが、これから先も新しい画風(技術)が生まれる可能性などあるのでしょうか。

A.
 「出尽くした…」とのことですが、それは、個人的な尺度による考え方です。これからまだまだ先のある人生、今からそう決め付けるのは、如何なものでしょうか。

「絵画は材料を組み立てて表現するもの」。アーティストにとって今後の重要課題は「マテリアルのパフォーマンスをどこまで引き出せるか」です。

「高橋メソッドは模写の技法を教えるところ」と勘違いされ易いようですが、模写の技法なんてものはありません。あくまでもオリジナルを描くための過渡的な学習手段なのです。

…リアルイメージ(すでに仕上げられた名画など)を、最初から再構築(模写)する。リアルイメージすなわち出来ている絵を手本にして、自分の力で材料を組み立てて、もう一枚のリアルイメージを制作する。この作業を何度も繰り返すことで、材料の性質〜扱い方〜組み立て方(技法)といった、絵画表現の元素記号=エレメント収集する。そして、蓄積されたデータと経験を基に、オリジナル制作を展開させるのです。

…あなたが独自の画風を生み出したいのなら、今ご説明した学習方法もひとつの手段ではないでしょうか

ほとんどの人は、画材店の棚に並べられた、すっかり準備された絵具・画溶液・キャンバス…を使って描きます。つまり、ほとんどの人が、同じ材料条件と技術によって、制作が展開されています。
例えば、「天然樹脂などで表面処理を行った木目の美しいシナ合板に、直接、風景を描く」「カゼインと色素を加えたブランフィクスを、モルタルのように厚塗りした水性下地の上に描き始める・・」など、絵具の支持面を、工夫するだけで、表現の幅が広がります。ちょうど数学で一か所の数字や計算式を変えることによって、答えも変わるのと一緒です。
古い時代(印象派以前)の名画、すなわち先達による仕事の中には、そういったヒントが豊富に存在しているのです。

…以前、ドイツ・シュミンケ社[ムッシーニ・レジンオイルカラー]を使った、三大様式による制作見本を依頼されました。都内では、渋谷・ウエマツ/神田・文房堂/丸善美術本社に展示しました。このサンプルはまったく同じ絵具を使ったとしても、技法によって幅広い画面効果が得られることを、実例で紹介したものです。参考になると思いますので機会があれば、ぜひご覧下さい。
*現在、神田・文房堂には展示されていません。


Q-15.
 以前通っていた教室の先生からはターレンスの絵具を…。新しい先生からは、ムッシーニの絵具を勧められて使っています。日本のメーカーの手練り風の絵具もあるようですが、何がどう違うのか良くわかりません。

A.
 どれも高価な絵具ばかりですね。国産のギルドシリーズは、一本数千円もします。絵具の選択基準は色々ですが、一番困った考え方は値段で決めてしまうことではないでしょうか。仕入値が百円のものを、定価を二百円にするか二千円にするかは、販売会社が決めることですから、品質と性能が価格に比例しているとは言い切れません。

用途も使い方も知らない人が、「一番良い筆は、コリンスキー」。その上「絵筆は洗ってはいかん!」と先生から指導されて、一本何万円もする筆を一回でだめにしてしまった。という実例もあります。先生は、「なぜその製品を勧めるのか」については、納得するまで説明してもらうべきでしょう。

さて、絵具に限らず材料の選択は、使用目的がはっきりしていなけばなりません。あなた自身がいろいろな人の意見に振り回されているのは、その目的が定まっていないからです。
例えば、「レンブラントをほとんど同じように描くことができるが、国産品では、どうしても色が出ない」といった次元でのお悩みならば、ベルギーのブロックス社の絵具をお勧めします。市販製品の中では、特別に優れた製品です。そして、それでもご不満ならば、ご自分で手練りするか、(資)俵屋工房に特注するとよいでしょう。


Q-16. 高校で美術の教師をしています。高橋メソッドのカリキュラムに興味があり、できれば学校の授業にも取り入れたいのですが。

A.
 高校〜大学の先生、高橋メソッドには様々な問い合わせがあります。みなさん国立〜私立系の美術大学のご出身とのことですが、油彩画の伝統技術を学ばれた方は、一人もいらっしゃいません。

…高橋メソッドのカリキュラムに関心を寄せて頂くことはありがたいのですが、高橋メソッドのカリキュラムは、ひと言のご説明で、明日の授業に取り入れられるほど、簡単なものではありません。

絵画技術は、あくまでも手仕事であり、繊細な職人技術です。他の学問のように資料を調べれば、答が出てくるようなものではありません。
高橋メソッドの技法教則を、指導マニュアルに真剣に取り入れたいのでしたら、しばらくの間、高橋メソッドに通学する必要があります。そして、あなたが生徒さんに教える前に、高橋メソッドの講師から、生徒の立場になって、指導方法を学ばれてください。高橋メソッド・中津美術研究所は、そんな先生方を応援します。いつでもご相談に応じますのでお問合せください。

付:学校関係者だけではなく、現在、絵画教室を運営されている方、今現在、美大生で将来、教室を開設されたい方もご相談ください。合理的な絵画学習方法は、受講生の方たちにとっても、とても有難いはずです。
高橋メソッドの[メソッド]は、ヴァイオリンの[鈴木メソッド(メソード)]の関係者の方の許可を頂いて命名したものです。その当時の海外では、ヴァイオリンを持って歩けば「鈴木メソードの生徒さんですか!」と言われるくらい、世界中に普及した、音楽の学習方法です。
高橋メソッドの技法教則も、皆さんと一緒に世界に広めて参りたいと存じます。





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