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  ラピスラズリについて [はじめに] 俵屋工房 店主 高橋亮馬  2012.11.30

   俵屋工房の「天然ラピスラズリ」は、四半世紀以上に渡る製法技術の開発によって作られた高濃度・高純度を
   誇る吉川製ラピスラズリです。
   その品質は、世界最高峰と言っても過言ではありません。

   この手記は、吉川製ラピスラズリを取り扱わせて頂くことに因みまして、店主とラピスラズリに関する、これまでの
   足跡について綴らせて頂きました。
   
   まずは、この素晴らしい吉川製ラピスラズリを生み出されるまでの、これまでのご尽力に敬意を表すると共に、
   俵屋工房にご提供下さいます光栄に感謝申し上げます


 第一章 ラピスラズリとの出会い
 
 書籍の中のラピスラズリ





保育社のカラーブックス




王室コレクション
パリ・ルーブル美術館

絵を始めたのが10歳。ラピスラズリを知ったのは、その少し前だった。


中国語を教えていた父親のお弟子さんから、本棚ひとつ分の本を預かった。その中に高度成長期の大人たちを魅了していたあのベストセラー[保育社のカラーブックスシリーズ]が百冊ほどあった。
「パリ・ロンドン・北斎・熱帯魚・油絵・・」など、学校から帰ると毎日楽しみに見ていた。とりわけ、二冊の「宝石シリーズ」は、天然鉱物や貴石に興味を持つきっかけとなった。とはいえ、その時は、ルビーやサファイアをうっとり眺めていて、ラピスラズリについては、あまり記憶に残っていない。ましてやその石が絵具になるなんて、まったく知る由もなかった。

それから数カ月後に絵を学び始めた。その頃、先生からお借りした集英社のルーブル美術館の本に、美しい青色で描かれた衣裳や宝飾品が載っていた。この本は、絵画と彫刻が主体であったがルイ14世の[王室コレクション]の宝石細工には、すっかり魅了されてしまった。


 初めてのルーブル美術館



ラピスの舟形杯


それから約十年後に渡欧。最初の目的は学校探しと、名画の細部の目視であった。到着早々、お腹の中にフランス料理を仕込んでから、先ずはルーブル美術館へ・・。そして、導かれるように入って行ったのが[王室コレクション]
天井の高さに驚く、描かれていた絵にも・・。しばらく天井画を見てから、目の前のガラスケースに視線を下ろすと、そこには何とも素晴らしい宝飾品が・・。

ラピスの舟形杯 [16世紀・ラピスラズリ・金メッキした銀・エマイユ(七宝)を施した金・・]とにかくルーブル美術館の絵画の技術も凄いが、宝石細工の技術も凄い。まだ何もできなかった自分ではあったが、職人の血が騒いだ。
「地球には凄い物がある。世の中には素晴らしい物がたくさんある。人間って凄いな・・」二十歳(はたち)になったばかりの新鮮な感動だった。


 日本の画材店とラピスラズリ

絵画材料としてのラピスラズリを入手することができることを知ったのも、ちょうどそのころだった。上野、正確にいうと御徒町に、画材の拘り者の専門店があった。


余談だが、この画材店に行く時には、例えば千円の天然樹脂を買いに行くとしたら、二千円くらいの手土産を持ってお邪魔させて頂いた。二千円と言えば、その当時の一週間分の食費だった。
手土産の理由は簡単だ。毎回、「貴重な画材の知識を与えて下さった」からだ。だから僕は、いちども自分が客だなんて思ったことがない。経営的にも大変そうであったが、全国の拘り者のために、特別な材料を常備されていた。ご店主のご努力に常に感謝していた。「高橋くん、画材屋のおやじはね、絵描きさんの縁の下の力持ちなんだよ・・」と、胸を張って経営の大変さを払拭されていたのが懐かしい。

「ウィンザーニュートンのラピスラズリを入手できるとお聞きしたのですが」
「ああ、これだよ。ちょっとだけ残しておいたの」
「売って頂けるのですか」
「日本にはこれしかないんだ。英国とアフガニスタンが揉めているから、今は英国のメーカーも原料が入って来ない。海外の戦争が日本の絵描きのパレットに影響するとはね。ビックリだね」
「ちなみにおいくらですか?」
「注文生産の絵具が15mlで五万円」


 Dr.KREMER(独) との出会い


ブロックス社・チリ産 (左)


入荷困難と聞くと余計に欲しくなった。が、しかし、輸入が困難となれば、ここは「ラピスラズリを使う前に腕を磨かないと・・」と、気を入れ替えてから十数年。
ドイツに住んでいた生徒さんから、Dr.KREMERを紹介していただいた。送ってもらった資料は、当然ドイツ語であったが、なぜか内容を見て「凄い」と思った。読めもしないドイツ語なのに「これはストラスブルグターペンタイン?」「これってフェルメールのオルト黄?」「ダ・ビィンチのビスタ?」・・。直観的にそう感じた。理由は分からないがすべて、自分が探し求めていた物ばかりだった。(どうして解読することができたのかは、後日、友人が説明してくれた。思うところがいくつもあったので、とても不思議に思った)
すぐにチケットを手配してミュンヘンへ飛んだ。
目的の材料を入手したらすぐに帰国して絵具を練りたかったので長居は無用。
「成田〜ミュンヘンの日帰りみたいなチケットをお願いします」・・渡航規定によりトンボ帰りは無理。4日以上の滞在が必要とのこと。知らなかった。

それ以降のドイツへの仕入れは、英国に数日滞在して、美大の院生への指導を織り交ぜての渡航が定番となった


 ミュンヘンに画材の仕入れに


アルテピナコテーク *ミュンヘン



Kremer USA


Dr.KREMER
先生のミュンヘンのお店は、アルテピナコテイクの前。午前中の店内は僕一人。無言で延々と製品を物色する僕に責任者のヅェッツェン氏は、僕が店外に出られないように施錠してから店を後にした。警察を呼びに行ったのではない。昼休みに出掛けたのだ。時計を見たら午後1時を過ぎていた。開店と同時に入店してから3時間も経っていた。
ヅェッツェン氏は、笑顔で「僕はランチに行く。お店は閉店にするから、あなただけの貸し切り。気が済むまで見ていてください・・・」。おそらく、こんな説明だったと思う。

とにかく品揃えには驚いたし、素晴らしいし、時間の経過には全く気がつかなかった・・。
翌日、ふたたびお店に物色に。
すべての顔料・樹脂・結合材・溶剤・助材・画布・道具・・を確認するにはあと数日要するほどだ。まるで、世界中から集められた画材のルーブル美術館だ。

前日のストラスブルグターペンタインに続いて調べたかったのが、ラピスラズリやリードティンイエローなどのヒストリックな顔料。


ラピスラズリを入手


ラピスラズリの発色を最大限に醸し
出すのは水溶性の技法とも言える。


さすがに[Fra Angelico blue]は、店頭には無く、本社まで、わざわざ取りに行ってきてくれた。ちなみに当時の価格は、キロ数百万円。確かに今までに見たことのない素晴らしい発色であったが、なぜか買わなかった。実際に購入したのは、他の3種類のグレードにした。

自宅に戻ってから、直ちに試し練りをした。お店での目視と感触からして疑問ではあったが、案の定、この二つは油彩絵具としては適していなかった。かといって[Fra Angelico blue]を常用しようとは、まったく考えていなかった。結果的には、その後の仕事には、ブロックスの人工青とラピスラズリを併用することになっていた。

ラピスラズリと[親指のマリア





完成間近の[親指のマリア]

シドッチ神父が日本に伝えた[聖母像]重要文化財の複製術を行う店主
2004年-2007年



衣裳部分の青色顔料の選択

複数のコバルト系顔料を中心にして、この時代の一般的なラピスラズリの発色を調合する。




経年変化と損傷部分の複写術

複製は、一度、仕上げられた当時の色彩に近い状態を復元してから数百年の間の[傷・損傷・化学変化]等の経年変化を複製



















絵師のお守り
[ラピスラズリのアミュレット]


2004
年、乃村工藝社より、長崎歴史文化博物館のための東京国立博物館蔵[親指のマリア]の複製製作の依頼が入る。国と地方自治体の担当者、請負企業、俵屋工房とで、「複製に関する仕様」について協議した。使用材料については、俵屋工房としては、「原資を化学分析して当時と同じ顔料〜結合材を使用する方法」が第一希望だった。それは、東博の代表の先生も同じだった。しかし、それには莫大な費用と日数、さらには人手を要する。希望は叶わなかった。と、同時にご依頼者が希望していたNHKの「複製画製作取材収録」も中止となった
複製画の仕様は、「現代的な材料を使用する」となったが、実は、個人的な拘りとして、可能な限り伝統的な古典画材を使用するようにした。もちろんラピスラズリも試みたた。
「国立博物館での初めての完全手彩色による複製画」の情報を聞きつけたルーブル美術館の元修復技術者が、ルーブル美術館の研究室の有志で開発した結合材を送ってくれた。
「私たちは技術者なので、実際に描ける方に試用して頂きたい」とコメントがあった。確かに、これを使えば絵具の縮みなどの経年変化を造作的に簡単に再現する事が出来る。しかし、自分の手元には、堅牢性や不変性等のデータが無い。そのうえ、大理石の上での塗布実験では、やや問題があった。


複製する作品は、17世紀頃に薄い(0.6ミリ以内)金属板に描かれた油彩画である。複製する材料も同じ銅板である。一般的な技術では描けない。イタリアの美術館の資料も調べて頂いたが、やはり当時の技術は、トップシークレット・・。
ウヒィツッの当時の資料には「銅版の表面は、タマネギで磨け」とあったが、実践はしなかった。

・・絵画学者たちは、古い時代の技術を「謎」として、時間を掛けて探究できるが、我々絵師たちには[納期]という契約がある。いつまでも謎解きをしている時間はない。複製術は、すべてそれまでの経験と「カン」に委ねるほかない。結果的に使用する材料は、すべて自前で行った。果たして想定通りの良好な結果となった。

ただ一番残念であり、心残りだったのが、原資と同じ[天然のラピスラズリ]を使えなかったことである。工房には確かにラピスラズリ顔料があった。フェルメールのブルーとしてNHKなどの番組にも何度か起用された顔料だ。しかし、色的にも粒子的にも、この時の複製画には適応していなかった。「もしあの時に[吉川ラピスラズリ]があったら」間違いなく使用していた。そして、依頼者・企業・東博の関係者の方々、プレスリリース等でも胸を張って「マリア様の青い衣裳には、オリジナルと同じ天然ラピスラズリ(吉川ラピス)を使用している」と、語り続けていただろう。



■俵屋工房関連グループの「羅迦恵(ラガエ)」の[Lamulet(ラミュレット)]は、
この経験から生まれた「絵師のためのお守り」。
たとえば、前述のマリア様の青い衣裳のように、本物のラピスラズリが必要に
なった時、突発的に重要な制作依頼があった時のための[お守り(アミュレット)]として常備携帯していれば、いつでもどこでも、容器からラピスラズリを取り出して手練り絵具を作って使用できる。


なぜ[ラピスラズリ]なのか



イタリア・ルネサンスからバロック時代に見られる青空と白い雲のグラデーション




赤土の下地の上への下絵・第一層目
ブロックスのラピスラズリと白を使用




下絵・第二層目
ブロックスのラピスラズリと白を使用
山には、若干の黄土を混色




本制作・第一層目
ブロックスのラピスラズリと白を使用。
山には、若干の黄土を混色



「なぜ、天然のラピスラズリなのか?」
理由は簡単だ。食物に「自然(食)」があるように、絵具にも「自然()」がある。

化学合成された添加物が入っていない飲み物は、身体が喜んでいるかのように優しく体内にしみわたり、気持ちまでも潤わせてくれる。これは色彩も一緒だ。

絵画史としての古典と近代の境目については、絵画技術の経験がない学者は、表現的なスクール、もしくは教条的な物差しで分けているが、描画現場の技術者である僕の見解とは異なる。

例えば、風景画の緑を、[天然のラピスラズリ系と黄土で表現していた時代]が「古典」。[化学合成のクローム緑、ビリジャンなどで表現されるようになった時代]が「近代」とも分けられる。
[高橋メソッドの技法教則本]の用語の中に、「絵画表現の基礎的な展開方法・[バックグランド技法]」がある。単純に「どこから描くか」ということで、その基本が「実際の情景と同じようにして・・」。つまり、「後ろにある物から」となる。つづいて、「樹木や草の緑の表現」については、「樹木の緑は、青空の光と大地の恵みによって光合成されている」。この構造を絵具に置き換えると、「青空の青色と大地の黄土によって調合〜彩色」となる。このように古典的な緑の表現は、自然科学に共通する技術によるもので、一方の近代絵画の緑は、「化学合成された緑色の顔料〜絵具」をそのまま使っての表現。葉っぱの緑ではなく、絵具としての緑が使われた。
化学合成された近代顔料は、天然素材にくらべると鮮やかさや発色性に優れているが、人の心に触れる絵画に、スーパーカーやレーシングカーなど工業目的で開発された強烈な発色性が必要だろうか。僕は、それよりもアルタミアや中世の頃の天然かつ自然な色材が好きだ。僕は、緑を表現する時は、これからも地中から採掘されたラピスラズリと、世界の大地からの恵みである天然黄土を主体にして使い続けるだろう。しかし、混色する際のラピスラズリは、チリ産の原石や色素密度の小さいものでは不都合。高濃度のラピスラズリ顔料が欠かせない。

そして、もうひとつの理由は、例えばイタリアのファブリアーノのローマ紙のように、五百年近く前から変更されていない紙がある。この紙に初めてペン先をあてた時の感触は未だに忘れない。「私たち絵師の先達であるラファエルやダ・ビィンチ・・も、これとまったく同じ感触で描いていたのか」と、思うと、時空を超えた明確なコミュニケーション、繋がりができたようで、とても嬉しかった。絵描き冥利に尽きる。絵師としての至福の時でもある・・。と思うのは僕だけかもしれないが?
それは、このラピスラズリも一緒である。エジプト時代の画工、フラアンジェリコもファンエイクも、フェルメールも・・青色が化学合成される前の時代の絵師たちは皆、この青を使っていたのだ。そんな先達と同じ「同じ材料を、同じ色彩を、同じ条件で、使えるなんて!」世の中に、そこまで贅沢で嬉しい事は、滅多にないだろう。

吉川ラピスとの出会い





ラピスラズリジェニインの手練り絵具には、ストラスブルグターペンタイン配合のメジュームを勧めたい。

*店主は、松脂や天然樹脂成分は、ラピスラズリの化学変化を抑えてくれる性質があるように感じている。




数年前の年末、ご注文頂いた[RTペンティングメジューム]の発送が、訳あって間に合わなかったことがあった。製品は直接、配達することになった。

「はて、先月も同じ方から数本のご注文があったばかり。また追加注文。「大作の壁画でも描かれているのだろうか?」。その量の多さにスタッフとともに驚いていた。
お届けの待合せ場所に着くと、明らかに芸術系のお仕事をされているご風貌の方がいらっしゃった。

「いつもご注文ありがとうございます。失礼ですが美術関係のお仕事をされていらっしゃるのですか?」
「はい、そんな感じの仕事を少ししています。」
「たくさん絵を描かれていらっしゃるようですが展覧会なども?」
「たまにですが」
「失礼ですが、有名な方なのですか?」
「いやいや、ちょっとだけ絵の研究をしているだけです。俵屋さんのホームページやビデオなどでも見させて頂いています。最近では近くの国立大学の講習のテキストにも使わせて頂いています・・」。

数日後、お手紙が届いた。
「先日お渡しした顔料は、学生時代から研究しているラピスラズリです。お試し頂けたらぜひご感想をお願い致します」。

最初に頂いたのは写真の[NO.01]だった。僕も近い将来、小川に水車を作ってラピスラズリを粉砕する計画があったことや、良質な物はDr.KREMER[Fra Angelico blue]のお世話になろうと決めていたので、正直言って、頂いた検体には、あまり興味はなかった。今になってはみては、とても失礼なことをしてしまったと反省。


真贋調査 【目利き度チェック−1】



天然の素材は、大方、画材としての基本的な名称・成分・加工内容・・が明記されている。しかし、用途的な品質などについては、自分で確認判断しなければならない。


*目視(色合い・形状)
*感触
*匂い
*味
*硬度(噛む)

・・などしながら、その素材が博物館の複製画など、重要な仕事に使えるか。責任を持って使えるか・・を、まさに「身を持って」確かめてから入手する。そして、工房に持ちかえった素材は、加工方法や処方等による使用経過を調査する。その素材が顔料の場合は、手練り〜各種塗布実験を行う。俵屋工房の自社製品は、すべて1年〜10年以上の使用実験を通過したものである。


最初に手渡されたラピスラズリの検査に入る。先ずは袋に入った状態での[目視]。色合いには問題ない。つづいて[感触]。ザラザラ・ゴツゴツ。検品は数秒で終わった。
僕は工房の助手に言った。「これはダメだ!この方は、僕をバカにされているのかな? こんな物は使えない・・」。

明らかな規格外品だった。本物のラピスから伝わってくる崇高な波動は全くない。というよりもむしろ、東南アジアのお土産屋で売っている「石膏を青色で着色した偽物ラピス」を思い出した。さらに、パレットを洗浄してみると、「パレットのこの染め具合(着色力)からすると、合成ウルトラマリンも混入されているかもしれない」と思えたほど疑義深い製品だった。そのラピスラズリは、ゴミ箱に捨てようと思ったが、思いとどまってサンプルとして取っておくことにした。


真贋調査 【目利き度チェック−2】




即日、前項の調査報告を送った。

「たいへん貴重なラピスラズリをありがとうございました。このたびご提供いただきましたラピスラズリは、私どもの基準といたしましては規格外の品質、不採用と判断いたしました。・・恐縮ですが、ご報告は以上とさせていただきます」。


年明け早々、ご返事のお手紙が届いた。

「・・失礼いたしました。お渡ししたラピスラズリは、世界的に有名な[**社]の製品です。私も高橋氏と同様に、この製品は使えません。しかし、学者さんの皆さんは、この製品を高く評価して論文を書きます。ですので、これまでに、このラピスラズリを検体としてお渡しした複数の専門家の方から、「使えない」「規格外品」との評価を頂いたのは高橋氏だけです。これまでに、私の数種のラピスラズリと他社製品との比較調査を、複数の専門家の皆さんに依頼しました。その結果、皆さんが、高橋氏が「使えない」という製品を、第一に評価されました。
・・私は今現在、ラピスラズリに対して最も信頼できるご評価を頂ける方は、高橋氏だけと判断いたしました。このたびは、高橋氏の[目利き度]を試させて頂きましたことは確かです。ご無礼をお詫び申し上げます。

・・このたびは私のラピスラズリを3種類お送りさせて頂きました。改めてご試用の上、ご評価いただければ幸いです・・」

 第二章 ラピスラズリの製品化

本格調査












俵屋吉川ラピスラズリ顔料




俵屋工房のラピスラズリのご神体(左)と顔料























複製画用のカラーチャート

このブーグローの作品の技法DVD
製作の企画がある。時期を見て着手の予定。


間もなく三種類の検体が届いた。感触はすべて「良好」。
No.2No.4の色合いは、「三種類の製法によるグレードの違い」と判断。No.4の色艶は、まさに「本瑠璃」と判断。

まずは、写真の[No.2No.3]を、試し練りした。
なぜ[No.4]は、練らなかったのか?理由は簡単だ。「使えないから」だ。粗悪と言うことではない。正反対の理由だ。
「国際市場では、百グラム数十万円の高価な製品であることから、一般的に使用できるものではない」と、判断したからだ。これだけの素晴らしい色材、活用+常用するにもそれなりの準備が必要だ。何事にも順番がある。

・・試し練りの結果。[No.2]の発色は、天然由来とは思えないほど素晴らしい。
絵具の「粘性」と「立ち」と、言った点でも予想を遥かに超えた完璧な状態に仕上がった。
「これならば、練ってすぐにチューブに詰めても保存がきく」と判断。しかし、あまりにも上出来なので、一抹の心配もあった。あとは[塗布実験]の結果を待つ。

大まかな表現だが、Genuin Lapis Lazuli」は、発色的には天然ウルトラマリン、いわゆる [Fra Angelico blue(瑠璃)]と、以前に俵屋工房が取り扱っていたチリ産のラピスラズリの中間に位置する。練り具合も、特別な問題も、目立った特徴もなかったので、普段、使用するのに最も適しているものと判断。ただし、市販製品に使い慣れている人からすると「ネバっぽさ」や「流動性の重さ」を感じるだろう。余計な添加物を混入しないとこうなるのだ。

[
塗布実験] 塗布後1−2日。[No.2]の塗布面は、案の定、[塗布後のスエット]、すなわち結合材の分散による[ムラ]が出はじめた。練り上げた当初は、まるで体質材や金属石鹸を混入させたような安定した粘調性が得られた。・・・ということは、色素抽出作業時の「樹脂分〜蝋分の残留物」と推測。と同時に、すると[No.2] の製法は、チェンニーノチェンニーニの処方によるラピスラズリの可能性が高い。

後日、「チェンニーニの製法」と判明。
樹脂分を若干残しておいた物。こうすることで、発色を良くして高く売ることができる。そのレプリカであった。「これは、某メーカーたちが良くやる方法です。高橋さん、また見破りましたね。」
またもや目利き度を試されたかたちだ。

[No.3]は、何ら違和感なく使えると判断。俵屋工房で製品化するには、現時点では、このグレードが、最も適していると判断。しかし、絵具が画材メーカーによって作られるようになった産業革命以前の絵具は、画材店の棚からユーザーの絵具箱で長期保存する目的で処方されたものではない。それを今回、俵屋工房が、手練りして流通する上で、どのように対処するか・・、決定するまでに1年を要した。

2012年、別件の用事もあり、お正月に上野の西洋美術館にスタッフと3名で出掛けた。事前に準備していた青色のカラーチャートを持って、中世から19世紀前半の作品を中心に、青の発色を調査した。結果は、ほとんどすべての青が[No.3] の発色に共通するものであった。逆にいえば、が[Fra Angelico blue(瑠璃)]系の青の使用は、当時のヨーロッパでも特別な画家が特別な目的で使用したものと推測。分かりやすく言えば、素材の入手事情〜製法上の高技術+手間暇・・など、この顔料は、それだけ貴重なものであったと判断できる

フェルメールの青いターバンとラピスラズリ


[べリー公の時祷書・10月のページ]
15世紀・コンデ美術館 フランス


そろそろ[ラピスラズリ・ブルー・ジェヌイン]と[天然ウルトラマリ・ブルー]を明確に分類する時期ではないだろうか。
前者は粉砕によって得られた色素[Genuin Lapis Lazuli]。
後者はチェンニーノチェンニーニの処方による[Fra Angelico blueUltramarine Blue瑠璃)]

瑠璃クラスのラピスラズリ、いわゆる天然ウルトラマリンブルーが「フェルメールの青いターバンの色」と論じられている。これは絵画技術を知らない絵画学者による引き継ぎ論、もしくは単なるイメージで言っていると思われる。
天然ラピスラズリ由来の顔料と言っても、グレードの幅がある。「良し悪し」ということではない。分かりやすく言えば、どんなに頑張っても一カ月で1キロしかできないものと、頑張れば数百キロ作れるものがある。その製法の違いで、色材としてのラピスラズリは、まったくと言ってよいほど「別物」になる。当然、価格も別格だ。実際の問題として、フェルメールのブルーは、「俵屋吉川」での[Genuin Lapis Lazuli]に相当。さらに発色の良い物を求めるのであれば[Lapis Lazuli Pure secondをお勧めする(現在、在庫なし)。これもチェンニ―のによる製法なので品質は抜群、絵具としても使いやすい。

ラピスラズリ【油彩絵具としての特長】


















僕は十代から二十代の時に書いた著書の中に「15世紀のファンエイクの時代は、それぞれの顔料が貴重であったため、今日のように今日のように混色を多用するのではなく、混色することなく固有色の発色を最大限発揮させることを尊重した」と記した。極端にいえば、「ラピスラズリの絵具には何も混色しないで、そのまま使用した」ということだ。しかし、このように決めつける事は、間違いだった。訂正してお詫びしたい。

実際にラピスラズリの絵具を常用できるようになってからは、青い衣裳・青い花・青い空・・のほか、新緑から深緑・ブドウのマスカット・マラカイトのような背景・・、巨峰のインディゴ〜紫がかった果物の青・・様々な物の表現に使わせて頂いている。

【マイセンのような陶器の絵付】これは、単独で使用する例としての代表格。俵屋工房の[Genuin Lapis Lazuli油彩絵具]は、油分が若干多目になっているので、細密な表現では、ホワイトでモデリングしたまっさらな陶器を準備したら、油分の少ない[RT.Painting medium No.2]で、絵具の粘性濃度を調節してから、[黒丸00/20/3]を使って加筆する。一層でも十分発色するが、塗り重ねれば、発色は、文字通り「一層」よくなる。説明しているだけでも、素晴らしい発色がイメージされて武者ぶるいするくらいだ。

15世紀の板絵に描かれた風景画の空、ラファエロ系の母子像の空の表現】
Genuin Lapis Lazuli油彩絵具]は、とても素晴らしく、そして、心地よい表現を演出してくれるだろう。この部分の描き方の注意点は、青と白の「汽水域」つまり、遠景の白い雲から青空へと移行する色のグラデーションの技術である。しかし、天然由来の[Genuin Lapis Lazuli油彩絵具]は、極端にいうと「目を閉じていても簡単に表現できる」といった感想だ。つまり、これまで常用してきた発色力の強い合成ウルトラマリンブルーの場合、この微妙なグラデーションの調整がとても難しかったのである。充分に注意しないと、強烈な青によって、白い部分まで容易に青に染められてしまうのであった。その点、「昔の材料の方が、現代の材料よりも、技術的な操作性に優れていた物が、これ以外にもあったのではないかな」と、古い時代の絵師の材料事情に少し嫉妬を覚えたりもした。

【マスカットの緑〜マラカイトのようなガラスや背景の表現】
Genuin Lapis Lazuli油彩絵具]と天然黄土のイエローオーカーを混色する。すると「どうしてこんなに相性も馴染みもいいのだろうか」と思うはずだ。考えれば、僕ら人間よりも遥かに長い関係、数億年も地中で一緒に時を過ごした関係・・、僕たち人間が口をはさめるような関係ではない。どうりで仲が良いはずた。Genuin Lapis Lazuli油彩絵具]とイエローオーカー、下絵には少し白を混ぜて不透明にしてモデリング。この時は、ターペンタインで溶いて使用する。乾いたら、同じく[Genuin Lapis Lazuli油彩絵具]とイエローオーカー、透明感が欲しかったらゴールとオーカー、あるいは、インディアンイエロー(ゴールデンイエローなど)を若干加えて[RT.Painting medium No.2]で粘性を調整して塗布。乾いたら、マスカットの「粉(こ)」の表現などを行う。全行程、薄塗り三層仕上げなら[RT.Painting medium No.2]だけでもよい。肖像画や静物の背景にマラカイトのような緑を表現する時にも、前述と同様のやり方が使える。ホルバインやデューラーの絵に良く見る緑。マラカイトの使用とされれば、それまでだが、もしかしたら彼らも、このやり方で背景の緑を表現していたかもしれない。もし僕が正式に複製画の注文を受けたら、迷うことなくこの方法を採用する。理由は簡単だ。入手できた天然マラカイトが、必ずしも原資と全く同じ色とは言い切れないからだ。つまり、[Genuin Lapis Lazuli]もしくは[Genuin Lapis Lazuli Pure]と、イエローオーカーとの比率で、幅広い色合いが得られるからだ。



顔料と絵具の組成

Genuin Lapis Lazuli手練り絵具[顕微鏡写真]は、こちらからどうぞ

■顔料
[Genuin Lapis Lazuli]


絵具組成 ラピスラズリ(アフガニスタン・ダフシャン産
       粒子 30μ以下
       
色素濃度 40
特 徴   アフガニスタン産の最もグレードの高い3Aの原石を粉砕。
       水簸
精製(可能な限り不純物を取り除く作業)
結合材   乾性油・膠・アラビアガム・などの絵画用メジュームなど

[Lapis Lazuli Pure]


絵具組成  ラピスラズリ(アフガニスタン・ダフシャン産
        粒子 30μ以下
        
色素濃度 50
特  徴   アフガニスタン産の最もグレードの高い3Aの原石を粉砕したものを、
        チェンニーノチェンニーニの
製法によって手間暇かけて色素を抽出
        した、瑠璃に近い品質と高貴な発色を誇る天然ウルトラマリン。


注意事項  [Genuin Lapis Lazuli] [Lapis Lazuli Pure]共通
■画像は、ご利用
のモニター環境等によって、実際の色とは異なる場合がありますので、目安としてご参考下さい。■人体に使用しないで下さい。■目・口・鼻に入らないようにして下さい。■絵具を練ったり解いたりする場合は、使用後は手をよく洗って下さい。■お子様の手のとどかない場所に保管して下さい。







手練り絵具の組成 [Genuin Lapis Lazuli] [Lapis Lazuli Pure]共通

顔  料 [天然ラピスラズリ]
結合材 [サンブリーチド・リファインド・ボイルドリンシードオイル]*俵屋工房製

ヽ┣萢囘嗟僂忘惑檗収穫されたコールドプレスドリンシードオイルをドイツから輸入。
[Dr.Kremer社]
⇒憧錣北の数倍のアルカリ水と白土と共に混ぜ合わせて、紫外線の強い春から夏の半年間前後、太陽に晒す。
数カ月すると油が澄んできて若干、体積が減少する(濃縮ではない)
た凜月すると水も澄んでくる。沈殿したものは、アルカリに作用したたんぱく質系の不純物と思われる。
この後、容器から油だけを取りだしてから、一定の温度で定時間加熱。
油性結合材として不純物を除去し、太陽と水の作用によって油を漂泊、油は濃縮されるも油の状態は[サラサラ]と化す。絵具の伸びは、未加工時よりもより良くなるも塗布後の塗膜・絵具層は、銅版やガラスに塗ってもしっかりと固着する魔法のような乾性油となる。前述の[親指のマリア(長崎歴史文化博物館蔵)]の銅版の絵も、この油の強化版を使用。この油の違いの分かる絵師の方は、この油以外の油が使えなくなる所以だ。


         ´◆         ´            






絵師のお守り[Lamulet(ラミュレット)]







ラミュレットの大きさは、ご覧の画像の大きさとほぼ同様です。

Vermeer No.1[左]
Vermeer No.3[右]

*チェーンとキャップは、シルバーとゴールドの二種類です。




Lamuletは、浄化用のホワイトセージとご一緒にお届けしています。


Lamulet(ラミュレット)]を発想したのは、2004-2007年に行った東京国立博物館での[親指のマリア]の複製画に由来する。この複製画とその技術は、後に、俵屋工房は、[絵画複製技術国内最高品位]との名誉あるご評価を頂くことになった。

製作者の僕としては、当初、東博のご厚意で、原資を直接目視しながらの製作は、ご依頼者の事情によって叶わなかったが、完成度については、製作期間中の様々なアクシデントと偶然が重なったことが功を奏して、ほぼ満足している。が、しかし、一番残念であり、心残りだったのが、天然のラピスラズリ顔料を使えなかったことだ。その時に「吉川ラピスと出会っていたら・・」。間違いなく使用していた。

俵屋工房関連グループの「羅迦恵(ラガエ)」の[Lamulet(ラミュレット)]は、この経験から生まれた「絵師のためのお守り」だ。その絵師の一生の間で最も重要な仕事(制作)の時に、お守りの容器から取り出して手練りして使用するためのものだ。もちろん、絵を描かない方にも、パワーストーンと呼ばれるきっかけとなったラピスラズリ、そして、その歴史的かつ鮮やかな色素を抽出、まさにラピスラズリのエキスを、お守りとしてお勧めできる。すでにたくさんの絵師の方、僕のお弟子さんたち、一般の方、ご家族・・の方々が、ネックレスとして身につけられたり、バッグに携帯されたり、毎日、肌身離さず大切にされているとのことです。


ラミュレット(造語:Lamule)とは、ラピスラズリ(英:lapis lazuriアミュレット(英:amulet)を掛け合わせた僕の造語。アミュレットとは、「取り除く、保護」を意味するラテン語のamuletumに由来との説もある。一般的には、悪運・魔物・危害、病気などから身を守るための[守り]として用いられている。






[Lamulet(ラミュレット)]の浄化

左は、キャンバス木枠の原木[Western redcedar]で作った天然素材の浄化専用ケース
たっぷりのホワイトセージを引きつめて大切にご愛用ください。








キャンバス・木枠サイズ ΑΕレサンジャパン製
キャンバス・木枠サイズ


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